東京高等裁判所 昭和26年(う)5222号 判決
よつてその余の論旨に対する判断を省略し(事実誤認の主張についての当裁判所の見解は後掲当裁判所の認定するところにより自ら明らかである。)刑事訴訟法第三百九十七条に従い原判決を破棄し、なお、当裁判所は、訴訟記録並びに原審及び当審において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるので、同法第四百条但書によつて自ら更に判決をすることとする。
当裁判所が認めた犯罪事実は、原判決摘示の事実と同じであるから、ここにこれを引用する。
右の事実は、
一、被告人の司法警察員に対する第一回乃至第三回供述調書中の同人の供述記載の一部、
(中略)
を綜合してこれを認める。
なお、原審において司法警察員に対する被告人の第一回乃至第三回供述調書中の被告人が武井又一郎方に放火した点、並に火災発生当夜同人宅に行つた点、及び同人方に行つた道筋時間についての供述記載部分を任意性に疑あるを理由としてこれが排除決定をしたのに対し、当裁判所は前掲のように犯罪事実認定の証拠に採用しているので、この点について以下念のため一言する。第一審において任意性のない疑をもつて排除決定した自白調書であつて右決定に対し提出者において何ら異議を留めていない場合においても、更に控訴審において右任意性の点について調査の結果原審の右認定が誤であつたことが判明した場合においては、法定の要件を具備している限り、これを証拠とすることは何ら妨げないものと解するのが相当であつて、
(中略)
果して然らば当審においては調査の結果改めて当審において検察官より提出した前記三通の被告人の供述調書は、任意性を具備し且つ刑事訴訟法第三百二十二条第一項の要件を具備するものと認めるので、同条項による証拠として差支えないものと解する次第である。
(後略)